# 感性開発プロセスの構築 ―感性の定量化への挑戦― 感性の領域へのモデルベース開発適用の意義

AZAPAはこれまで、EVコンバージョンやバッテリーステーションなど、主にBEVの商用車向けソリューションを展開してきました。これは、弊社の強みであるモデルベース開発(MBD)による最適設計が、経済合理性を重視する商用車の価値最大化に直結する手法だからです。

 しかし、モビリティの価値は経済合理性だけに留まりません。「意のままの操作感」や「心地よい乗り味」といった、感性的な価値基準も極めて重要です。例えば、商用車における「疲労軽減」や「運転のしやすさ」、スポーツカーにおける「走りの楽しさ」、高級車における「質感」や「静粛性」。これらはすべて、ユーザー体験の根幹を成す感性価値です。

 AZAPAは、運動性能のような物理現象だけでなく、この曖昧な「感性領域」においても、MBDを用いた定量的なエビデンスに基づく設計手法の構築に挑戦しています。主観的な問いに客観的な「物差し」を導入することで、開発の効率化はもちろん、多車種展開時におけるブランドの味の統一と、高い品質保証の実現を目指します。


1.従来的な感性の作りこみとAZAPAの技術的挑戦

「感性的な価値」の作り込みは一筋縄ではいきません。従来の車両開発では、熟練のテストドライバーの感覚や経験に依存する部分が大きく、属人化しやすいという課題がありました。

AZAPAは、「計測・モデル化・最適化」という3ステップのアプローチにより、感性をデータドリブンに設計可能なものへと進化させることを目指しています。

【技術的な視点、現場の本音】
感性のモデル化・指標化は極めて難易度の高い挑戦です。
例えば、シートにパッドを追加して形状を微調整したとします。ドライバーは「ホールド性が増し、骨格が安定したことで視界のブレが減り、運転の不安感が解消された」と、その変化を鋭く察知します。しかし、これを「体圧分布」「骨格位置」「視線計測」などのデータから定量的に証明しようとすると、以下のような高い壁に突き当たります。

微細な信号とノイズの混在:
路面からの微振動という大きな「ノイズ」の中に、シート変更による微小な「信号」が埋もれ、変化を捉えるのが困難。

再現性の欠如:
実走行では、ステアリング操作や走行軌跡を完全に一致させることは不可能であり、データに不可避なバラつきが生じる。

正解の不在:
「どのような波形形状であれば、人間が心地よいと感じるのか」という、物理量と心理量の相関関係(メカニズム)が未解明。

個体差とコンディション:
ドライバーの個人差に加え、その日の体調や心理状態によっても感じ方が変動する。
このように、人間のマルチモーダル(多角的)な感覚は極めて複雑です。走行環境、車両状態、そして人間のコンディションといった無数の不確定要素が絡み合うことが、感性を定量化することを困難にしています。

しかし、私たちはモビリティにさらなるの付加価値をもたらすためには、この困難な課題は避けて通れないと考えています。


2. AZAPAの3ステップアプローチ


感性をデータドリブンで扱うため、AZAPAは以下のプロセスを構築。

一歩ずつ「感性の正体」に迫っています。

STEP 1:網羅的な計測(Measure)

「SparkLink」を活用した多接続・同期無線計測システムにより、ドライバーと車両の挙動をミリ秒単位で同期して取得すると合わせて、官能評価をタッチディスプレイ上で行います。これらのデータを紐づけてクラウドにアップロードして管理し、後段の分析プロセスと接続させます。

STEP 2:感性のモデル化(Modeling)

 計測した物理データと官能評価を紐付け、「感性モデル」を構築します 。これにより、車両諸元の変更、例えばサスペンションの仕様変更が「心地よさ」にどう影響するかを定量的に予測・比較することが可能になります 。

STEP 3:バーチャル環境での最適化(Optimize)

 構築した感性モデルを活用し、感性を定量的に評価します。
また、性能シミュレータに組み込んだ感性モデルにおいては、物理的な試作を繰り返すことなく、バーチャル環境で感性を最大化させる車両仕様(パラメータ)を効率的に探索し、個別最適化された設計諸元の組合せを提案します 。

4.モビリティ全体の進化への貢献

 この感性エンジニアリングの導入は、開発期間の短縮やコスト削減といった「効率化」だけでなく、ブランド独自の「走りの味」の統一や、顧客一人ひとりに合わせたパーソナライズという「新たな付加価値」を生み出します 。


【将来への展望】 私たちは、この取り組みを自動車以外のあらゆるモビリティへ広げていきたいと考えています。例えば、建設機械や農業機械における「作業性の向上」や「疲れにくさ」の追求です。過酷な現場で働く人々にとって、機械の操作のしやすさや疲れにくさの向上に直結します。モビリティに関わるすべての人に「心地よい体験」を届けるため、AZAPAは挑戦していきます。


F1_2
RECRUIT

異なる意見に耳を傾け、
リスペクトしあう関係を築ける仲間との出会い

TAGS

検索