車両開発の意思決定を革新し、日本のモビリティ産業を再定義する
自動車業界のシステムインテグレーションを牽引するAZAPA株式会社(以下「AZAPA」)は、複雑化する次世代モビリティ開発において、車両全体の価値指標を早期に定義し、戦略的な開発判断を支援するプラットフォーム「性能SIM」を提供している。

■ 技術の進化により生まれた課題
昨今の技術発展は目まぐるしく、自動車を構成する要素技術は個々に高度な進化を遂げた。しかし、その進化は往々にして局所的であり、システム全体としての「価値」を最大化できているだろうか。多くの開発現場では、膨大な工数を投じたシミュレーションが設計後の「検証」や「部分最適」に留まり、開発後半で発覚する手戻り(リワーク)がコストと時間を侵食し続けている。
AZAPAが提供する性能SIMは、単なる計算ツールではなく、プロダクトが本来持つべき「価値」を定義し、部門や企業の垣根を越えて合意形成を導くための、戦略的な「意思決定プラットフォーム」である。
■ 性能SIMのコアコンセプト:最上流での「価値の合意」
「性能SIM」の核となるのは、機能を抽象化して価値を最大化するMBSE(モデルベース・システム・エンジニアリング)の思想である。AZAPAでは、従来のV字プロセスを「価値設計」「実装設計」「適合設計」の3段階に再定義した独自の開発手法「TDM (Total Development Management)」を提唱している。

TDMでは、プロセスの最上流における「価値設計」と、それに基づく「早期の合意形成」を何よりも重視する。 従来のV字プロセスを「価値設計・評価」「実装設計・評価」「適合設計・評価」の3段階に再構築するこの独自の開発基盤は、開発の在り方を根本から変える。
― 企画段階での性能合意:起草された複数のコンセプトに対し、原理モデルと性能SIMを用いることで、目標性能の達成状況を即座に評価し、合意形成を行う。
― 「早く知る」ことの価値:設計に対する結果を早期に把握することで、無駄な試作を徹底的に排除し、品質向上と最適解の導出を前倒しで行う。
― フロントローディングの徹底:TDMによるアーキテクトの明確化は、開発プロセス全体で約35%の効率化を可能にする。これは単なる工数削減ではなく、エンジニアが「何を作るべきか」という本質的な議論に立ち返るための時間を創出することを意味する。
■ 「手戻り」の根絶:曖昧な要求設計をTDMと性能SIMで強固な資産へ
開発における手戻りの大半は、要求設計が曖昧で要求とSPECが整合しないことと、システム理解の不足によるプロセス間の不連続性に起因する。TDMにより要求設計を強固にすることで、手戻りを根本から解決し、システム全体最適化を実現する。
この「TDM」という革新的な開発手法を、実際の現場で実行・具現化するためのプラットフォームこそが「性能SIM」である。これにより、開発の最上流工程において、部門や企業の垣根を越えた劇的な変革を実現する。

■ 戦略を裏付ける「分析能力」
性能SIMが単なるシミュレーターを超え、戦略的な意思決定の核となり得るのは、要求設計を支援し、TDMを具現化する以下の高度な機能群を備えているからだ。

― 1. 一貫した価値指標に基づく評価・分析
個々の部品性能ではなく、車両システム全体として目標が達成できているかを一貫した指標で検証する。 加速性能、燃費、航続距離、コストといった多角的な価値モデルを設定し、目標値に対する達成状況やトレードオフをリアルタイムに可視化する。
― 2. プロポジション分析と他社比較
自社製品の現在地(Current)と目標(Target)、さらには他社製品(Competitors)との比較を同一環境下で実施。 市場における自社の優位性を定量的に把握し、ボトルネックを分析することで、要求設計へのバックキャスト(逆引き)を可能にする。
― 3. 1Dシミュレーションによる迅速な設計・実行
車両システム全体の挙動と性能を1Dでモデルベースシミュレーションすることで、膨大な計算時間を要することなく、網羅的な走行シナリオや「使われ方」に応じた性能バラツキを迅速に検証する。
― 4. 寄与度分析と全体最適の実現
制御因子の変化が車両性能に与える影響を解析し、車両全体としての最適解を導き出す。 部品諸元や制御パラメータの変更が車両レベルでどのように影響するかを、シミュレーション解析を通じて論理的に合意形成できる。
― 5. モデル化を支援するモデルライブラリ
パラメータや部品構成を交換するだけでシステムモデルを構築できるモデルライブラリにより、企画段階での車両システムモデル構築を可能にし、TDMプロセスの遂行を支援する。
この機能群はTDMのプロセスそのものであり、開発現場においてプロセス変革のみでなく、プロセスとシミュレーションの相同化による効率向上を同時にもたらす。要求設計段階における定量的な分析評価と意思決定を本質から支援し、合意不足を根本から解消する。
■ 圧倒的な効率化がもたらす「創造性」への回帰
性能SIMが要求設計からバーチャル適合までを一貫した価値指標で繋ぎ、開発プロセスの全域において「全体最適」を実現することで、このプロセス変革は、「劇的なコスト削減と品質向上」をもたらす。開発プロセス全体でコストを20%削減しつつ、網羅的なパラメータ最適化によって品質を30%向上させるという、相反する課題の同時解決が可能になる。
そして、最大の革新は「試作レス」の実現である。モデル同定により実車を机上に再現することでバーチャル検証を可能にし、物理的な実機検証を最小限に抑制する。AZAPAはシステムの深い理解と自動車開発の知見、自社保有するシャシーダイナモをはじめとする計測システムと同定計測技術により、モデル同定において実車「相当」の精度を実現。従来膨大な工数を要していた実車評価を最終確認のみに集約し、開発期間の劇的な短縮を可能にした。
本プラットフォームをベースとした開発手法は、すでにEVコンバージョン事業(EVC)等の実案件に適用され、短期間での車両構築と目標性能達成の両立という圧倒的なスピードを証明している。

■ 単なるツールの枠を超え、産業のインフラへ
現在、AZAPAは単なるソフトウェアの提供に留まらず、モデル流通のエコシステム構築を推進している。その基盤となるのが、産官学の垣根を越えて高精度なモデル資産を共有・管理するプラットフォーム「MMP(Model Market Place)[5] 」だ。モデル資産のオープン化、共創と流通により、自動車業界全体でのMBSE普及と、部門・企業のみならず、OEMとサプライヤーの垣根も超えた「モデル流通インフラ」を構築する。
性能SIMのモデルライブラリはこのMMPと接続し、モデル資産の一元管理と持続的なアップデートを実現する。そして、独立した1Dシミュレーションツールではなく、統計解析、3D可視化による視覚的意思決定、Data Driven、3D-CAE領域とも連成可能な開発プラットフォームとして機能する。これにより、設計、モデル、検証が連続化され、モデル流通のエコシステムは「MBSE開発の標準基盤」へと昇華される。

性能SIMはすでに海外のOEMへの導入実績を有し、国内の複数の主要OEMにおいてもトライアルユースが進行している。この事実は、このプラットフォームがもはや一企業のツールではなく、次世代の産業標準になり得ることを示唆している。
参考画像
図1 3D可視化による自動運転制御の開発/検証環境

図2 性能SIMにおける分析例

用語解説
- フロントローディング
開発プロセスの初期(上流)工程に負荷をかけ、早期に課題を出し切ることで、後工程での手戻りを防ぐ手法。性能SIMではこれにより約35%の効率化を実現する。 - モデル同定
シミュレーション上のモデルが、実際の実車の挙動と一致するようにパラメータを調整・最適化するプロセス。これにより、実車を「机上に再現」することが可能となる。 - プロポジション分析
自社の現在地、目標、そして競合他社の製品を同一環境下で比較・評価する分析手法。市場における優位性を定量的に把握するために用いられる。 - 寄与度分析
ある性能(例:燃費や加速)に対して、どの部品や制御因子がどの程度影響を与えているかを解析すること。これにより、効率的な性能向上のための合意形成が可能になる。
【本件に関するお問合せ】AZAPA株式会社
URL: https://azapa.co.jp/




