-part6- 進化するモデルベーステクノロジーで、ハイブリッド車の開発をリードする
ヨーロッパを中心とする先進諸国が「脱ガソリン」へと舵を切る中、注目されているのがHV(ハイブリッド車)だ。まだまだ高級品であるEV(電気自動車)に対し、エンジンとモーターという2つの動力を組み合わせて走るHVは車両コストに優れ、多くの人が手に入れやすい。完全なEV社会へと移行するまでの間、ハイブリッド車が果たす役割は大きいだろう。AZAPAではモデルベーステクノロジーを使い、ハイブリッド車の開発を支援している。その一端をお見せしよう。
途上国では、まだまだハイブリッド車の普及余地がある
弊社システムデザインカンパニーの兼岩潤平は、AZAPAがハイブリッド車の開発を支援する理由をこう説明する。
「中国や欧州ではEVのインフラが整いつつありますが、日本を含め他のアジア諸国や途上国では、法律やインフラ整備を含め、まだまだ完全なEV化は難しいと見ています。EV化は既定路線としても、普及までの空白期間にはガソリンも併用すべきというのがAZAPAの考えです。特にCO2の排出が少なく、価格面でも魅力的なハイブリッド車にはまだまだ需要がある。さらにクリーン燃料によるエンジンと電気のハイブリッド化を含め、OEMメーカーとも協力して、開発の高品質化を進めていきたいと考えています」
既存の車種にHVの技術を応用すれば、環境に優しいクルマの開発が可能になる。ただしその開発はエンジン車の何倍も大変だ。エンジン、バッテリ、モーターそれぞれに関わるシステムや人材が必要で、開発工程がどうしても複雑になってしまう。
「実際に車両を動かした際、最初に定義した要求どおりに動作するかどうか。実車で試してみて『これは違う』となった場合、前の工程に戻って設計をやり直さなければなりません。開発のサイクルが同じところをぐるぐる回って、なかなか先へ進まないことに頭を悩ませるメーカーさんは多いと思います」(兼岩)
そこでAZAPAではモデルベーステクノロジーを使い、開発サイクルを小さくするコンサルティングを実施。今までは実機を使わなければできなかった制御の検証が、実機レスで可能になった。兼岩はクライアントの車両メーカーからの反応を、次のように語る。
「制御の振る舞いや性能のボトルネックを、実機レス、そしてフロントローディングで分析できるようになったことで、開発のコストカットだけでなく高品質化も可能になりました。クライアント企業からは『実車での評価結果による後戻りが防止でき、開発スピードが格段に上がった』と好評を頂いています」
エネルギー効率を制御するという問題を紐解き、最適な制御を導き出す
さらにAZAPAでは、他社製品の制御を独自技術で計測し、シミュレーションによる比較検討。制御を最適化することで10%の燃費改善を実現し、高燃費を導き出している。複数の制御案から制御の最適化を行う技術は、AZAPA独自のものだ。
「車両全体のシュミレーションモデルを作るのは難しく、多くの費用と時間がかかります。複数モデルの検討を通した最適化は、モデルベースに精通したAZAPAならではの取り組みですね」(兼岩)
システムデザインカンパニーでは今後も、モデルベースによってハイブリッド車の開発を支援していく。将来的には、車両が走行するさまざまな状況や車両の運転状況に応じた最適な制御をアルゴリズムで導き出す、高度なシステム開発も視野に入れている。実現すれば、AIを搭載したクルマが「ドライバーに合わせた制御」をしてくれる未来がやってくるかもしれない。学術機関との連携も進行中だ。AZAPAのハイブリッド開発技術から、ますます目が離せない。
兼岩 潤平
システムデザインカンパニー グループリーダー
2018年にAZAPA入社後、ハイブリット制御開発に従事。自動車及び自動二輪車OEM向けに、
モデルベースを活用した開発プロセスのコンサルティングを行い、ハイブリットシステムの最適化技術を提供している。