インテグレーション⼒で社会をアップデートする

AZAPAが今、商⽤軽⾃動⾞OEMメーカーとコンバージョン事業を共創する理由

AZAPAがOEMメーカーと共に取り組む「EVコンバージョン」。
多くの⼈が⼿に⼊れやすい安価なEVを社会実装させるため、軽⾃動⾞のリーディングカンパニーであるOEMとの共創は必然だった。弊社代表取締役の近藤は、EVという新たなモビリティを「社会システムのアップデートに必要不可⽋なもの」と位置づける。

モビリティとエネルギーの分断を超えるために

2025年は、EVが本格普及するにあたっての分⽔嶺となる年だといわれています。2030年には世界中で、エンジンがモーターへと完全に切り替わるでしょう。すでに中国は我々よりも先んじて、安価で⼿に⼊れやすいEVを製造し、⽇本の物流にも中国産のEVが⼊り込みつつあります。

AZAPAではEVを、「社会システムのアップデートに必要不可⽋なもの」と位置づけています。というのも社会が経済的に豊かになるためには、「エネルギー」と「モビリティ」を上⼿く融合(データ)させる必要があるからです。たとえば20世紀にガソリン⾞が普及した際、ドイツやイギリスが爆発的な経済発展を遂げたように、これからの時代には「電⼒」をいち早く交通や産業、物流など他の分野と連携させられる国が経済発展していくのです。

中国ではEVが物流分野と結びついて普及しつつある⼀⽅、⽇本ではまだエネルギーとモビリティ産業が分断されている現状があります。これは根深い問題です。モビリティとエネルギーの未来が不確実で、これまでの合理的な事業の成功モデルにとらわれていると、それぞれの分野が硬直的な組織で動けないままになってしまい⽇本は世界の潮流に乗り遅れてしまうでしょう。顧客との接点を失えば競争⼒も衰え、⾃動⾞業界だけでなくあらゆる産業が世界から奪われることになります。

競争⼒向上のカギは物流のEV化

コロナ禍で多くの⼈が実感したように、経済で最も重要なのは「移動の連続性」つまり物流です。Amazonを例に出すまでもなく、どんな中⼭間地域にもまるで⽑細⾎管のごとく⾄るところに物を届ける物流網が社会を⽀えている。そのシステムは、経済発展において最も重要といってもいいほどです。物流に使われるモビリティは、乗⽤⾞ではなく商⽤の軽トラや軽バンです。実はこの「商⽤物流の分野」こそ⽇本のEVが最も遅れをとっている分野であり、EV普及、ひいては経済発展のカギとなる分野だと私は考えています。

商⽤⾞は乗⽤⾞と⽐べて、多くの場合コストをかけられません。乗⽤⾞であれば、⾼機能の付加価値をつけて1000万円のモデルを2000万円に値上げしても、⾼所得者に売れるでしょう。しかし、100万円で販売されている商⽤の軽バンをEVにするとなったらどうか。バッテリの原価が⾼いために、100万円のモデルが300万円になってしまうかもしれません。価格が上がるのであれば、多くの⼈にとってEVを買うメリットはなく、物流事業者はもとより、⼀般消費者にも普及しないでしょう。

本来はここで「コストリダクション」が起きなくてはなりません。コストリダクションとは、⾼所得層しか買えない⾼機能なモノの価格が何らかのイノベーションによって下がることです。そうすればマス層も、それなりの機能のものを安く⼿に⼊れられるようになり、社会に富が⾏き渡って豊かになる。⼀⽅、リダクションができなければ社会全体に富が⾏き渡らず、富裕層だけが富を独占している状態が続きます。経済は循環せず、マス層の個⼈消費が伸びないので経済成⻑も⽌まるでしょう。

理想はイノベーションによるコスト低減

コストリダクションを実現するには、なんらかのイノベーションが必要です。たとえば携帯電話を考えてみると、当初は⼤型で⾼額のモデルしかありませんでしたが、チップの省電力化やバッテリーの小型化、通信スピードや通信エリアの拡⼤でイノベーションが起きた結果、⼩型で⼀般消費者でも⼿に⼊るモデルが徐々に開発され、今では1⼈1台が当たり前の世界になりました。それと同時に、半導体やソフトウェア、アプリ開発やEコマースなど周辺産業が発展してきたわけですから、イノベーションによる経済効果は相当なものです。

これをEVに当てはめるなら、「何らかのイノベーションによってコストリダクションが実現して初めて、マス層にもEVが普及する」ということになります。マス層にEVが普及した社会は、経済成⻑の要である「エネルギー」と「モビリティ」の産業融合が可能になった社会です。

イノベーションによって社会構造の変化を起こし、利益がもたらされるようなビジネスモデルを考えていくこと。そうすれば社会システムのアップデートが可能になり、次の時代の豊かさへと繋がっていくことでしょう。

同じ思想をもつ、⾃動⾞OEMとAZAPA

低価格の軽⾃動⾞や軽バン、軽トラの社会への普及は、経済の⽑細⾎管にあたる物流網を担保してきた。その歴史はまさにイノベーションの連続です。

⼀⽅のAZAPAもまた、⾃動⾞OEMメーカーがこれまで実現してきた「マス層への移動普及」こそ経済発展に不可⽋だと考えています。だからこそ、次の時代の豊かさのためにエネルギーとモビリティの産業融合を実現し、EVを広く普及させることを⽬指しているのです。

同じ思想をもつ両社が共創して新しい商⽤EVの仕組みを開発すれば、社会により多くの選択肢をもたらせるのではないか。私はそう考えています。

「社会が求める機能」からEVを作る

AZAPAはEV普及へのステップとして、次の2つの“マジック”を起こします。1つはリダクション技術によってEVの価格を下げること。もう1つは、社会のあり⽅から「本当に必要なEVの新機能」を考え抜き、それを実現することです。

たとえば、プラグインのEVはよくありますが、「プラグアウト」ができるEVはどうでしょうか。EVを通じてエネルギーをシェアする社会が実現すれば、災害時にEVが街の電⼒を⽀えることができるかもしれません。また、チャージポイントも含めて新たなエネルギーの取引も可能になるでしょう。電⼒のダイナミックプライシングも実現すると思います。

AZAPAはこのように、「社会のアーキテクチャ」からクルマづくりを考えています。社会にタッチしながら「EVの新しいあり⽅」を考え、機能や性能に落とし込んでいくのです。

インテグレーション⼒の重要性

本当に社会に必要とされるEVは、ただエンジンをモーターに置き換えれば完成するものではありません。まず今の⾞における要求というものを、しっかりと性能として評価できるような形でモデル化して、すべてのモデルをきちっと機能させるために機能を作る、ロジックを作っていく必要があるのです。

たとえば乗り⼼地を担保する⾜回りの性能ひとつをとっても、AZAPAの考える⾼みがあります。我々は「乗り⼼地」や「エモーション」の部分からクルマを開発するのですが、⾜回りから⾞体⾛⾏、駆動⼒、体にかかるGはエモーションと⾮常にリンクするものですから、⾜回りから作っていくのが最適なんですね。そうすると電池をどこに置くかによって重⼼は変わってきますし、駆動を前にするか後にするかによっても全く違ってきます。

コンバージョンの場合、通常であれば前⽅にエンジンがあるので、前の⽅にモーターを置いて動かします。プロペラシャフトをそのまま流⽤して、リアはプロペラシャフトの駆動で出すでしょう。したがってエンジンも重⼼も前の⽅にあって、プロペラシャフトで交流を回すことになるのですが、⼀般的にコンバージョンをする際に最も簡単なのは、エンジンを取った場所にそのままモーターを⼊れることです。それを我々は、あえてリアの後⽅にモーターを置く。モーターを置こうとすると邪魔なものが多々ありますから、そこをユニット化し、きちんと動くように全部作り直します。これが、システムインテグレーターとしてのAZAPAが考える性能の作り⽅です。

このインテグレーション⼒をもつAZAPAが、⾃動⾞OEMとともに経済の⽑細⾎管を担う商用EVを開発すれば、次の時代に叡智を残せるのではないか。EVをマス層に普及させ、エネルギーとモビリティの産業融合を成し遂げられるのではないか。今、⾰新的な技術に負けずとも劣らないほどに必要とされるのは、こうしたインテグレーション⼒なのです。困難に直⾯する社会に対して、新しい選択肢を増やしていく。同じフィロソフィーをもつ⾃動⾞OEMメーカーとAZAPAの共創に、私は⼤きな意義を感じているのです。

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