AZAPAの技術力 8 脱炭素と防災の未来を拓く「E-STATION」を公開しました。

脱炭素化とレジリエンス強化が企業に求められる中、再生可能エネルギーの活用は喫緊の課題だ。AZAPAが提供する「E-STATION」は、太陽光発電×蓄電によるモバイル電源ソリューション。100%太陽光発電で2台分のBEVが充電できるほか、災害時の緊急電源としても注目を集めている。

市では、株式会社オークワ本社への「E-STATION」実証導入が実現。提案・連携を担ったのは、トヨタカローラ和歌山株式会社だ。本記事では、モビリティとエネルギーの両面から地域課題に挑む先進的な取り組みの裏側を、関係者の証言とともに紐解いていく。

はじまりはトップダウンの太陽光推進から


近畿・東海地方を中心に、スーパーマーケットを150店舗以上展開する株式会社オークワ。脱炭素への取り組みは、10年以上前からトップダウンで進められてきた

株式会社オークワ 郡司執行役員:当社の太陽光導入は、現社長の強い方針が原点になっています。2013年の売電型導入から始まり、2018年には自家消費型太陽光発電システムを導入。屋根の耐荷重や設備スペースなど制約がある中でも、積極的に展開を進めてきました。2024年8月現在では、稼働事業所は22か所まで拡大しています。

 

株式会社オークワ 郡司執行役員

株式会社オークワ 坂口総務部長:太陽光発電の他にも、ペットボトルの水平リサイクルや廃油回収といった環境施策も総務主導で展開してきました。実はこうした取り組みは、当初「脱炭素」や「ゼロカーボン」といったキーワードとはあまり関係がなかったんです。自家消費型の太陽光発電を導入して、自社で発電した電力を自社で使っている企業が出てきた、という段階からのスタートでした。時期でいうと2018年から2019年頃ですね。

それが2020年頃から、少しずつ舵取りが変わってきた印象があります。政府も「2030年度に温室効果ガスを2013年度から46%削減」といった具体的な目標を掲げ、方向性を示すようになりました。当社でも、2030 年度のScope1とScope2のCO2排出量を「2017年度比で50%」削減する目標を掲げています。

 

株式会社オークワ 坂口総務部長

電力会社との協業で100%再エネ店舗も実現


郡司執行役員:2021年以降は関西電力や中部電力と協業し、本社を含め100%再生可能エネルギーで賄っている店舗も複数出てきました。今回の「E-STATION」導入も、当社の太陽光活用の延長線上にあるものです。

 

オークワ本社の駐車場に設置されたE-STATION

AZAPAとの出会い、そして「E-STATION」


オークワの脱炭素への意欲が、新たな出会いを呼び込んだ。トヨタカローラ和歌山とのつながりが、「E-STATION」導入の大きなきっかけとなったのだ。

トヨタカローラ和歌山株式会社 横山専務:もともとオークワ様との出会いは、2023年、トヨタ自動車グループが企画した「このまち市場」という移動スーパープロジェクトがきっかけです。高齢者の多い地域でスーパーが撤退したエリアへの移動販売の仕組みを、地元のスーパーさんや自治体を巻き込み、持続可能な形で構築できないかという全国初の試みでした。その中で、和歌山を代表するスーパーマーケットチェーンであるオークワ様とのつながりができたのです。

「このまち市場」も含め、弊社もオークワ様ほどではないのですが、ここ4〜5年ほどSDGsをキーワードに、地域課題解決や環境対応に力を入れてきました。ご存知のように自動車業界でも「脱炭素」が重要なキーワードで、ここ数年はメーカーだけではなく販売店にも、カーボンニュートラルへの取り組みが強く求められています。

そんな中でAZAPAの「E-STATION」を知り、「オークワさんとなら実現できるかもしれない」と感じ、郡司さんにご紹介したのです。当初はトヨタのBEVとセットでの導入を予定していましたが、法改正などもあり、まずはAZAPAのコンバージョンBEV(既存のガソリン車を電気自動車に改造したもの)での先行導入となりました。

 

トヨタカローラ和歌山株式会社 横山専務

「E-STATION」が可能にする、高度なエネルギーマネジメント


AZAPA株式会社 エネルギーカンパニー 山本VP:少し補足させていただきますと、2015年から2020年頃までのCO2削減というのは、蛍光灯をLEDに変えるような、シンプルな取り組みが中心でした。単純に「電力使用量を減らしましょう」と。

一方で、その後、社会全体で「FIT(再生可能エネルギーの固定価格買取制度)」などの導入もあって、太陽光発電や風力発電といった“発電タイミングを制御できない電源”が一気に増えてきました。時間帯によっては、それらが全体の電源構成の20〜30%を占めるような、非常に大きな存在になってきたんです。

 

AZAPAエネルギーカンパニー 山本VP

一方で、たとえばオークワさんのような小売業の場合、電力使用量というのはある程度予測が立つんです。「この月のイベントがない土日の使用量はこのくらい」というのが、だいたい分かっている。ところがBEV(電気自動車)はそうはいきません。「昨日たまたま遠出したから、今日は充電が必要」とか、「今日は走らなかったから充電はいらない」とか、そういう日々の変動が激しいんですね。

しかも、急速充電器で10kWを使うとなると、一般家庭2軒分の電力を一気に消費するほどの大きな負荷がかかる。それが「明日は充電するかも」「今日はしないかも」となると、電力の需要予測が非常に難しくなります。発電側も、太陽が出ているかどうかなどで「いつ発電できるか」はコントロールできない。

つまり、純粋にCO2の「量」だけを減らすのではなく、「余っている時に効率よく使い、足りない時は我慢する」という、より高度なエネルギーマネジメントが求められるんですね。「E-STATION」は、この課題に応えるシステムです。中で発電した電気と、充電するBEVとの間を仲介し、蓄電池にためて最適なタイミングで使うことができるんです。本来であれば、電力系統全体、あるいは地域全体でエネルギーマネジメントを行うべきところを、「E-STATION」はその仕組みをぎゅっと凝縮して実現しています。

 

100%太陽光発電&蓄電による独立型BEVシェアシステム「E-STATION」

災害時の「命綱」としての「E-STATION」


「E-STATION」はCO2削減だけでなく、地域の防災への取り組みを加速させるものとしても期待されている。

株式会社オークワ 郡司執行役員:今回設置した「E-STATION」に蓄電した電力は、今は車でしか使えませんが、将来的には持ち運びできるバッテリーとしても活用したいと考えています。それこそ、お客様のモビリティ、たとえばバイクのバッテリーなどにも使えるようにしたいですね。持ち運び可能なバッテリーという形は、ぜひ実現してほしいと思っています。

 

「E-STATION」では2台分のBEVや、小型のモビリティを充電できる

株式会社オークワ 郡司執行役員:防災という観点も非常に重要です。停電の際は、携帯電話の充電など最低限の電力は補えますし、太陽光発電なので感電のリスクも少なく、安全に電源を使えるのも大きなポイントです。

もちろん災害は起こってはいけないものですが、たとえば南海トラフ地震のような大きな災害が起きたときに、「オークワにあの設備があって本当によかったね」と言ってもらえたら、それはお金には代えがたい価値です。だからこそ、この点も地域の方々に向けてしっかりPRしていきたいですね。

AZAPA 山本:一般的な系統連携接続というのは、電力会社さんの送電線から電気をもらって発電を行う仕組みです。しかし、この「E-STATION」は電線とつながっていません。つまり、系統独立型の充電ステーションなんです。

この完全独立型であることの大きなメリットは、災害時に停電が起きても、電力系統と接続していないため「E-STATION」ではそのまま発電し続けることができる点です。発電した電気は非常用の電源として活用できる。避難されている方々に電源を供給したり、あるいはオークワ様の施設内に電気を供給することで、BCP(事業継続計画)対策を行うことも可能です。

トヨタカローラ和歌山 横山専務:自動車会社も防災には注目しており、BEVのバッテリーを蓄電池として活用する取り組みを進めています。地域と防災協定を結び、災害時にはBEVを供給する準備を進めているんです。「E-STATION」の導入は、こうした防災への取り組みとも合致するものですね。

未来へつなぐ、データ連携の力


「E-STATION」の究極のゴールは、車と発電施設がデータでつながり、最適なエネルギーマネジメントを実現することにある。

株式会社オークワ 郡司執行役員:今後は「E-STATION」に、発電効率のさらなる向上と、蓄電量の増加を期待したいですね。当社としては、店舗を運営するほどの電源を求めているわけではありませんが、緊急時に事務所の電源を確保したり、緊急連絡ができる程度の電力は欲しいと考えています。現状、車1台分や2台分では物足りなさを感じますね。ただ、BEV自体も電源と考えるのであれば、これとセットで当社が電気自動車をどれだけ導入できるかが重要になるでしょう。今回「E-STATION」と合わせて導入した、AZAPAのコンバージョンBEVの活用方法も模索していくつもりです。

AZAPA 山本:まずはコストを下げて普及を進め、設置数が増えれば、より多くの車両や蓄電池、太陽光パネルが相互につながり、「こっちは電力が不足しているけれど、あっちは余っている」「今はこのクルマは我慢して、別のクルマを充電しよう」といった柔軟な運用ができるようになります。そうすればエネルギーの最適な活用がさらに進むでしょう。私たちが今描くエネルギー制御が実現できるよう、最適なシステムを開発していきたいですね。

郡司執行役員:当社も待っているだけでは何も始まりませんから、まずはやってみて、そこから次の段階に進んでいくという姿勢です。AZAPAの技術力には大いに期待していますよ。

 

オークワ本社ビルと「E-STATION」、コンバージョンBE

「E-STATION」で実現する、地域のエネルギーマネジメント


AZAPA 山本:私たちが目指すのは、クルマと発電施設がデータでつながり、「いつ充電・放電するか」「BEVがどう動くか」といった制御が自動で行える未来です。現在は、各自動車会社が自社の車と充電器を連携させる“閉じたネットワーク”を構築していますが、異なるメーカー間の連携は進んでいません。

その「つながらない」部分をつなげるのが、私たちAZAPAの使命です。ただ、私たちだけの力では限界があるので、今回のようにオークワさんやトヨタカローラ和歌山さんと一緒に実機実証を積み重ねていきたいですね。

株式会社オークワ 郡司執行役員:CO2削減もそうですし、食料品を安定して供給すること、そして健康を提供すること、そのすべてをひっくるめて「この地域にオークワがあってよかったね」と、そして「オークワだったら安心だね」と言われることが究極のゴール。だからこそ、先進的な取り組みをされている企業から積極的に情報を吸収し、ご一緒していきたいと思います。

株式会社オークワ 坂口総務部長:当社の経営理念「商業を通じて地域社会に貢献する」のとおり、どんな些細なことでも、地域社会に貢献し続けることが重要だと考えています。今後もさまざまな取り組みを加速させ、この地域を一緒に盛り上げていきましょう。

トヨタカローラ和歌山株式会社 横山専務:この活動が広がり、オークワ様と私たちだけでなく、県内全体で協力する企業パートナーを増やしていけたら理想的です。これこそまさに「地域共創型モデル」ですね。

AZAPA 山本:プロジェクトを進める中で、それぞれが役割を果たす良いチームができたと感じています。今後、たとえば他の店舗への展開や、3社間での他のビジネス領域への応用、共有したデータの活用など、さまざまな広がりが見えてきました。これからも引き続き、密にやり取りをしながら、この取り組みを未来につなげていければと思っています。

< PROFILE >

株式会社オークワ 執行役員 社長室長
郡司 雅夫

1995年 株式会社オークワ入社
2014年 総務部課長就任
2017年社長室長 就任
2021年 執行役員 社長室長就任

株式会社オークワ 総務部長 サステナビリティ
推進室長 坂口 博之

1987年 株式会社オークワ入社
2017年総務部長兼環境対策室長就任
2021年総務部長兼サステナビリティ推進室長就任

トヨタカローラ和歌山株式会社 代表取締役専務
管理本部長 横山 幸平

2007年トヨタカローラ和歌山株式会社入社
2013年営業本部 営業部長就任
2020年執行役員 営業部長就任
2021年代表取締役専務 管理本部長就任

AZAPA株式会社 エネルギーカンパニー
VicePresident 山本 賢一

2010年東京工業大学大学院修了、その後自動車OEM、ベンチャー企業などで電動モビリティの開発に従事

2022年 AZAPA入社、事業企画部、エネルギーカンパニーVPに就任。
バッテリ交換式BEVやバッテリ、充電システムなどの開発を進めている。

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