-part3- 「人に寄り添うAI」で、自動運転をもっと安全に。
PHOTO BY SHOTA MAKINO
日々進化を続ける、自動運転のテクノロジー。AZAPAもまた、自動運転にまつわる様々なデータを計測(センシング)する技術で業界をリードする。
「ドライバー1人ひとりの個性に合わせた、より安全な自動運転を実現したい」
そんな思いから、シリコンバレーに研究拠点を置くAIベンチャー企業「TieSet(タイセット)」との共同プロジェクトが始まった。プロジェクトの狙いを、当社電子制御カンパニー電子システム開発部の田中良明はこう説明する。
「今回AZAPAが組むことになったTieSetは、2020年4月に設立された真新しいスタートアップ企業です。AIで学習したインテリジェンスを活用しつつ社会に流通させ、パラダイムシフトを実現させる『分散連合学習プラットフォーム』の技術が強み。AZAPAの技術力とかけ合わせれば、新たなイノベーションを起こせると考えました」
シリコンバレーと日本をつなぐAI開発プロジェクトは、2021年1月にスタート。新たなビジネス分野で、社会変革を目指すチャレンジが始まった。
自動運転に必要な「目」による『認知』と『判断』を、AIで進化させる
自動運転には、ADAS(=Advanced driver-assistance systems=エーダス、先進運転支援システム)の機能が欠かせない。ADASとは、車がドライバーよりも先に周囲の情報を把握し、事故を未然に防ぐシステムのこと。ドライバーが気づく前にブレーキをかけたり、適切な車間距離を維持したり、車線からのはみ出しを食い止めるといった「運転アシスト」がその例だ。
「ADASが道路や歩行者などの周囲の情報を認知する『目』と『判断』のAIを高度化しようというのが本プロジェクトの狙いです。たとえば、ドライバーにはさまざまな運転のクセや弱点があります。道路に集中するあまり標識や信号を見るタイミングが遅れがちな人もいれば、前の車に気を取られる人もいる。あるいは、ドライバーによっては、ADASがアシストするタイミングに違和感・ストレスを感じていることもあります。それぞれの傾向や弱点を補うようにパーソナライズされたAIを開発し、ADASに応用すれば、より安全な運転支援システムができるでしょう」(田中)
(中見出し)ドライバーに寄り添うクルマへ
ADASがパーソナライズされれば、ドライバーに応じたより一層きめ細やかな運転支援システムができあがる。「人に寄り添うクルマ」の誕生だ。
安全性はもちろん、運転の快適性もさらに向上するはずだ。今回のプロジェクトでは、AZAPAのパワースクータによる実験も実施。パワースクータを運転する人のストレス値を心拍数などから計測し、カメラからの周囲の情報と共にAIに学習させた。
実験の結果、「この人には早めにブレーキを踏めるよう警告を出す」「この人には警告を出すよりも、ブレーキを早めに作動させた方がよい」など、個々のドライバーの特性に合わせた心地よい安全運転が可能になる。しかし、こうしたAIによる『機械学習』には通常、膨大なデータの収集と大規模なコンピュータの処理が必要になる。従来の組み込み型のAIでは、ビッグデータをクラウドに集めて学習した結果を製品に組み込むような手法が取られ、製品に組み込まれるのは画一的なAIだった。一方、TieSetのSTADLEプラットフォームをAI学習に用いれば、分散したそれぞれのエッジ側の機器で学習した判断結果などのナレッジをリアルタイムで共有することができるようになる。AIの学習側路を飛躍的に向上させ、その結果のアップデートされたナレッジをエッジ側の機器の動作の判断に生かせるようになることが分かった。
さらにこのTieSetの「分散連合AI」の技術は、車両の自動運転の分野だけではなく、再生可能エネルギーや多くの産業分野にも適用可能。今後、AZAPAとTieSetでは協業して実証・社会実装を進めていく予定だ。
事故を未然に防ぐだけではなく、ドライバーに寄り添うクルマ。AZAPAの技術とTieSetのAIで、自動運転とエネルギーの分野はさらに安全に進化する。快適な未来はすぐそこだ。
TieSet Inc. https://tie-set.com/
TieSet Asia株式会社 https://tie-set.jp/
STADLE:https://stadle.ai
電子制御カンパニー電子システム開発部
田中良明
1984年早稲田大学大学院修了後、Panasonic株式会社(当時 松下電器株式会社)に入社。2018年AZAPA株式会社入社。