#AZAPAの技術力 -part4-

-part4–  モビリティのAZAPAが、あえて「エネルギー」に挑む理由とは

世界各国がCO2削減に向けて動き出すなか、AZAPAもまた新たな分野に挑戦しようとしている。環境に負荷を与えるディーゼルエンジンではなく、水素と酸素の化学反応で電気を作り、モーターを動かして走る「水素燃料電池船」やバス、ドローン、さらには離島のエネルギーを電気自動車(EV)や水素エネルギーで循環させる計画など、多くのプロジェクトが進行中だ。モビリティのAZAPAがなぜ今、あえてエネルギーに挑むのか。

エネルギーは私たちの生活の基礎

「モデルベース開発などエンジニアリングに強みのある当社ですが、実は創業した当初からエネルギーを中心に動いてきたのです」と語るのは、当社R&Dの吉田裕一。

「すべての経済活動はエネルギーがないと成り立ちません。つまりエネルギーは、社会にとって最も重要な分野。AZAPAが取り組む理由もそこにあります」(吉田)

たとえばもし電気代が無料なら、今よりもっとコストの安い自動車や機械、住宅などを作ることができる。人々の生活は楽になり、電気代が浮いた分、他のものを購買する人が増え、経済はさらに成長するだろう。

化石燃料よりも効率的で、サスティナブルなエネルギーを見つけて発展させていくことは、社会がよりよくなることとイコールだ。こうした前提がAZAPAをエネルギー分野に向かわせる。

「水素エネルギー」はCO2削減の大きな一手

吉田はこれから10年、20年のうちに、新たなエネルギー源の技術革新が行われていくとみる。その一端が「水素」だ。

たとえば水素と空気中の酸素を反応させて走る燃料電池車は、CO2や有害物質を一切出さないグリーンなモビリティ。乗用車だけでなくトラック、それからAZAPAが現在取り組んでいる燃料電池船やバスなどに適用されていけば、水素エネルギーがCO2を削減する未来が見えてくる。

「水素エネルギーはまだ高コストですが、安い水素の輸入が進めば、2050年にかけてEVと燃料電池車が9:1くらいの割合で普及するでしょう。AZAPAはシステムデザインの観点から、燃料電池によるモビリティの発展に関わっていく予定です

低コストで水素が供給できる未来は、そう遠くない。

エネルギーも地産地消の時代へ

未来のエネルギーはもちろん、水素だけではない。航空機の分野では、サトウキビやトウモロコシ、廃木材などのバイオマスを使った燃料が使われ始めた。地下にある熱を使った「地熱発電」や、海の深いところと浅いところの温度差を利用する「海洋発電」もある。波が動くエネルギーを利用した「波力発電」や、珍しいところでは生ゴミを発酵させたり、廃材を燃やして発電を行う「バイオマス発電」など、「多くの人が世界中で、いかに安いコストで電気を作れるかに集中していろんな研究を行っている」(吉田)。まだ答えは出ておらず、候補のひとつに水素があるというわけだ。

これからはそれぞれの国や地域で、人々のニーズに合った安価な発電方法を選ぶ時代が来るかもしれない。大量生産の時代から、人々のニーズに合った少量多品種のものづくりへとシフトするように、地域に即した安価なエネルギーで暮らす時代がやってくる。AZAPAでも、離島の電力をグリーンエネルギーでまかなうプロジェクトが進行中だ。

「まずは離島の経済状況に合わせて、多くの住民が手に入れやすい安価なEVを普及させ、そのEVを停電時には予備電力として使えるよう整備する計画です。将来的には、太陽光がふんだんに注ぐエリアではソーラーエネルギー、火山がある島では地熱発電、風が強いエリアでは風力発電など、地域の電力を地産地消でまかなう『マイクログリッド』(※注)が実現できるでしょう」

AZAPAが描く、未来のエネルギーの形。よりクリーンなエネルギーで社会を発展させるため、AZAPAはこれからもシステムデザインの観点から、多くのプロジェクトをリードしていく。

【※注:マイクログリッド:複数の小規模な発電施設から生み出した電力を、その地域で消費すること。いわば電力の地産地消。エネルギーとしては太陽光や風力、バイオマス、燃料電池、バッテリなども使われる】

1983年名古屋大学工学部航空学科修士課程卒業後、三菱重工にて、操縦系統をはじめとするシステムデザインを行い、戦闘機/民間航空機の開発に従事。2019年にAZAPAに入社。

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